常設展

山口牧生

パラミタガーデンの枯れ山水に配されたボート型の彫刻《石の中》は、「自然に近く、自然のままに」を生涯貫いた山口牧生が自らの柩をイメージして制作したものです。黒御影石の表面にベンガラを施した石彫は、静かな力を放ちながら、山野草が彩る里山と絶妙な調和を見せています。
山口牧生の石彫は、1983年度中原悌二郎賞受賞作を含む計7組が建物周辺に設置されています。

山口牧生[石の中] 山口牧生[くむかたち]
[ 石の中 ]
パラミタガーデン

具体的な物の形を作り出すことの少ない山口牧生の作品の中では、異色ともいえる作品ですが、独特の手彫り感を残した御影石の処理とベンガラによる着彩は、山口の作品に特有の静謐感を漂わせています。舟方にくり貫かれた内側は山口自身の身長に合わせて彫られており、作者はこれに乗って彼岸に渡るのだと話したと言われます。

[石の中 ]
第6室

「小嶋三郎一の部屋」に《石の中》が、生前の山口自身の希望により設置されています。


アーティストプロフィール

1927年生まれ。京都大学文学部哲学科美学美術史専攻卒業。その後、実際にものが作りたくなり、定時制高校に教師として勤務するかたわら、昼間は大阪市立美術研究所に通い彫刻を学びました。次第に石にひかれ、大阪と京都の境、能登黒と呼ばれる黒御影石の採掘場の片隅にアトリエをもち、石に向き合う日々のなかで、黒御影石の表面にベンガラを施すという独自の表現方法を築きました。「環境造形Q」を結成し、メンバーとともに野外彫刻を全国各地に制作。神戸市須磨離宮公園現代彫刻展、日本現代彫刻展など受賞多数。展覧会多数。2001年春、西宮市大谷記念美術館で開催された大回顧展「山口牧生展―自然に近く―」の半年後の12月に亡くなりました。享年74歳。


パブリックコレクション

京都国立近代美術館/神奈川県立近代美術館/滋賀県立近代美術館/和歌山県立近代美術館/名古屋市美術館/国立国際美術館/兵庫県立近代美術館/北九州美術館/ほか


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