

1891(明治24)年、東京に生まれた岸田劉生は、黒田清輝が主宰する白馬会洋画研究所で油彩画を学びました。やがて文芸同人雑誌『白樺』との出会いをきっかけに、ゴッホやセザンヌなど後期印象派から影響を受けた作品を制作したのち、北方ルネサンスの様式を手がかりとした精緻な写実表現へと転じ、深い静謐さにみちた静物画や肖像画を描くようになります。その後、宋元画や初期肉筆浮世絵、南画などの東洋的な美に関心を寄せ、それを自らの作品に反映させますが、1929(昭和4)年、病のため38歳の若さでこの世を去りました。
こうした画風の変遷とともに、劉生の手がけたジャンルの多様性が、いま注目を集めています。よく知られた油彩画ばかりではなく、水彩素描、日本画、版画にも、数多くの優れた作品を残しているのです。また日本の伝統に西洋のグラフィックをとりいれた、大正ロマンの香り漂う装幀画にも非凡な才能を開花させ、武者小路実篤の著書をはじめ、『白樺』の表紙などに多くの作品を残しています。
本展では、こうした多岐にわたる劉生の130点を超える作品を一堂にご紹介します。大正から昭和初期の洋画壇で特異な輝きを放った画家岸田劉生の、これまではあまり知られてこなかった多面的な魅力にふれていただく機会となれば幸いです。

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主催 | 公益財団法人岡田文化財団パラミタミュージアム |
後援 | 中日新聞社、伊勢新聞社、読売新聞社、朝日新聞社、 NHK津放送局、三重テレビ放送、三重エフエム放送 |
協力 | 公益財団法人日動美術財団 |